誘電体コーティングは屈折率が異なる層で構成されます。誘電体コーティングには主に、電子ビーム蒸着(E-beam),イオンアシスト蒸着(IAD),イオンビームスパッタリング(IBS)の3つの方法があります。コーティング物質を蒸発させ、基板に蒸着させる意味では原理的には同様です。異なるのは蒸着エネルギーです。
電子ビーム蒸着は低エネルギーのため、スポンジのように薄膜内に気泡や細孔があります。これらはいずれ水分で満たされるため、コーティングの屈折率、つまり光学的特性が変化することになります(“環境による変化”)。また、水分の存在は、オプティクスの損傷閾値の低下を招きます。強い光にさらされると、水分の蒸発時にコーティングの一部も剥がされます。結果的に、水分がなくなってもコーティング層が不均一になり、理論的損傷閾値が低下します。この蒸着法の利点は、低コストで、広く知られており、非常に多用途であることです。またコーティング自体もわずかに柔軟性があり、オプティクスの機械的ストレスの耐性を向上させます。
イオンアシスト電子ビーム蒸着は、その結果からもイオンビームスパッタリングとE-beamの中間と言えます。
イオンビームスパッタリングは、E-beamよりも100倍大きなエネルギーを持っています。そのため、コーティング層の分子は、蒸着時に共有結合を形成します。できたコーティングに気泡や細孔はなく、より均一で損傷閾値が高く、高繰り返し性の制御しやすいコーティングです。散乱および吸収特性もよく、全般的に高い仕様を示します(より広帯域,必要であればより狭いバンド幅,より高いスペクトル安定性…)。高精度のコーティングで、表面粗さを1ÅRMS以下、つまり<λ/5000以下に制御することができます。もちろん、コストも高くなり(原子をはじき出すのにとても時間がかかる)、コーティングの種類も制限される(ほとんどのUVコーティングで、スパッタ時にフッ素が解離してしまう:この場合はE-beamを利用)という欠点もあります。
弊社は各コーティングとも経験豊富で、様々な技術を駆使して行えるため、お客様の御要望に柔軟に対応することができます。Altechnaでご利用頂けるコーティングは以下の通りです。
・電子ビーム蒸着
・イオンアシスト蒸着
・イオンビームスパッタリング
必要なスペクトル感度や損傷閾値,硬度,表面品質などによって各方法を使い分けています。
電子ビーム蒸着 | イオンアシスト蒸着 |
イオンビーム スパッタリング |
マグネトロン スパッタリング |
|
堆積速さ | >10 Å/sec | ~10 Å/sec | ~3 Å/sec | 1-6 Å/sec |
コーティングエリア/回 | 3000 cm2 | 3000 cm2 | 500 cm2 | 2000 cm2 |
熱伝導率 | 低 | 中 | 高 | 高 |
コーティング中の温度範囲 | 200 - 300°C | 20 - 100°C | 20 - 150°C | 20-100°C |
膜総数 | 1-50 | ~50 | 200 | < 200 |
膜密度/空隙率 | 多孔質 | 高密度 | ほぼバルク | ほぼバルク |
密着性/耐久性 | 低 | 良 | 優 | 優 |
湿度感度 | あり | 少しあり | なし | なし |
エイジング効果(寿命劣化) | あり | 少しあり | なし | なし |
内部応力 | < 100MPa | ~ 100MPa | 数 100MPa | 数 100 MPa |